
♪コンサートレポート
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《令和4年度文化庁長官表彰記念》マリンバ界の巨匠 安倍圭子マリンバ&トーク コンサート
2023年10月06日(金) 19:00 高槻城公園芸術文化劇場南館 太陽ファルマテックホール
安倍圭子:わらべ歌リフレクションズⅡ~スペシャル・バージョン~、ガレリア・インプレッションズ~六本撥のための~スペシャル・バージョン、祭りの太鼓、遥かな海~マリンバ・アンサンブルのための~スペシャル・バージョン、マリンバ三重奏協奏曲「ザ・ウェーブ・インプレッションズ」スペシャル・バージョン
【出演】マリンバ&お話:安倍圭子 マリンバ:木村恭子、森田嘉子美、山下恵理、端野愛子、櫻井裕介 ピアノ:原 清夏
わが国マリンバ界の草分けである安倍圭子氏は、この楽器が楽壇においてまだまだ市民権を得ていなかった頃から、当代一級の作曲家たちに新曲を委嘱し、各地で演奏会を開き、メーカーと共同で楽器の開発改良に尽力するなど、一貫してこの楽器の普及に努めてきた。その甲斐あって、いまやマリンバ音楽は音楽界に確固たる地位を築き上げた。その功が称えられて文化庁長官表彰という輝かしい栄誉を勝ち得たのである。氏はこの楽器を知り尽くした演奏家としての見識を作曲にも振り向けてきており、この日はそんな自作曲の数々が披露された。
「マリンバは叩く楽器ではなく、響かせる楽器だ」と安倍氏は語る。あるときはやさしく撫でるように、またあるときは荒々しく力強く、多彩な変幻の様相を呈するその演奏は、きわめて洗練されている。かすかな呼吸の音さえはばかられる完全な静寂から、いつ始まったとも知れぬ音のうねりが発せられるというような楽器は他にはないであろう。人間の官能に直接働きかけるその響きは、真新しい木のホールの壁材にさえ共鳴するかのようだ。共演する次代のマリンバ奏者やピアニストたちも、偉大な先駆者への敬愛の念を胸に安倍氏を力強く支える。自らの来し方を語る安倍氏の言葉は、後に続く音楽家たちへの温かい眼差しに満ちていた。
やはりマリンバは「祈りの楽器」だと思う。木を叩いて音を出すという根源的な行いは、あらゆるところに棲む神的な存在を呼び覚まし、それに対して人々は畏怖の感情と共に祈りを捧げる。原始どのようにして音楽という営みが生まれたか、そんなことに思いを馳せる一夜であった。(音楽ライター:北川順一)
